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2014年5月11日日曜日

スマホ時代の付加価値コンデジ考:Canon PowerShot SX 700HS レビュー

日常のスナップ写真は、ほぼ iPhone5s で撮影する様になった。以前は通勤の時にでも、コンデジを常備していたが、手ぶら通勤派になって普通のコンデジを持たなくなってしまった。iPhone5s のカメラ機能は侮れない。f2.2 の明るさ、フルサイズ換算 30mm のスナップ好適画角、暗所に強い裏面照射型8百万画素 CMOS センサー。ビデオ機能は勿論 Full HD。光学ズームは備えていないが、画面を二本指で拡大、縮小するデジタルズームは利用可能。相当暗い場所ではノイズが気になる事もあるし、デジタルズームでは輪郭がぼやける事もあるが、かなり寄っての撮影も可能で、日常の撮影はほぼ iPhone5s で済ませる事が可能だ。


スマホでは出来ない事、を持たせないと、コンデジ(コンパクト・デジタルカメラ)ジャンルではもう生き残れない。絶滅危惧種である。実際、カメラメーカー側でも特徴の薄い「普通のコンデジ」生産を止めて、より付加価値の高いデジイチ(デジタル一眼レフ)やミラーレスにその軸足を移す傾向も顕著になりつつある。さて、そういうスマホ時代のコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)選びは、どうあるべきだろう。

Canon PowerShot HS 700SX も、そういう時代に、コンデジとして出来得る最大限の付加価値を追求した1台である。当方はたまたま年初の CP+ で新製品として出品されているのを見かけて気に入り、発売直後に購入したが、「スマホでは撮影出来ないシーン」が想定されるけれども、デジイチやミラーレスを持って行く程では無い時に本機を携行している。

本機の特徴で重要なのは3点。「5軸手ぶれ補正」と「光学30倍ズームレンズ」、そして「映像エンジン DIGIC 6」。それぞれの特徴を理解するには、Canon が制作しているこのスペシャルサイトのムービーがまず、わかり易いので御覧あれ。


まずは「5軸手ぶれ補正」。前機種の SX 280HS でもそのパワーは実証済みだったが、歩きながら動画を撮影しても手ぶれが低減される、その実力は確かなもの。iPhone5s に大きなやじろべえの様な撮影器具を装着することで手ぶれを軽減する事も可能だが、総重量はこちらの方が随分軽い(SX 700HS の装備重量は 269g のみ)。しかも秒間60コマ (60fps) の Full HD 撮影が可能となったので、動画の仕上がりも滑らかだ。SX 280HS では電池持ちがかなり悪く、動画を撮影すると電池が即終了する有様だったが、SX 700HS ではもう少し実用的になった。とはいえ、真面目に動画撮影するなら、予備電池は持っていたい。Full HD で最大撮影時間は4GB迄、という事なので、長時間の動画撮影には向かないが、数十秒〜数分の動画を繰り返し撮影するには適している。


そして、「光学30倍ズームレンズ」。以下の flickr アルバムに暗いカンファレンス会場での撮影作例がいくつか含まれているので御覧頂き度いが、暗い場所で手持ちでも30倍でここまで寄る事が出来る。前述の「5軸手振れ補正」そして後述の高性能な映像エンジンとの合わせ技が効いている。



映像エンジンは、最新型の「DIGIC6」。当方が所有するフルサイズデジイチの EOS 6D の映像エンジンは DIGIC 5+ なので、それよりも新しいエンジンがコンデジにもかかわらず奢られている。ちなみに当方がもう一台所有する PowerShot S120 も明るいレンズで秀逸な仕上がりを見せるカメラだが、こちらも DIGIC6 だ。暗所でのノイズ除去には、最新映像エンジンの効果が抜群だ。

以上3点の実力のほどは、こちらの flickr set の作例写真でじっくり御覧頂き度い。


本コンデジから採用された面白機能としては、左側面に設定された、フレーミングアシスト・ボタン。高倍率望遠ズームで撮影中にフレームから被写体が外れても、このボタンを押せば一旦ズームアウトして広角に戻り、被写体探しが簡単に。被写体が人物であれば、顔を探して自動的に再ズーミング、という事も可能。あるいは、近づく人の顔を同じ大きさで追い続けて自動でズームアウト、AF 追尾する機能も。徒競走を正面から撮影する場合などにはかなり使える機能であろう。

以上の通り、スマホとの差別化を意識した高機能が、「これでもか!」とてんこ盛りなのが最新コンデジの進化動向。スマホとの戦いが意識されているが故に、以前のコンデジよりも開発に力が入っている、とも考えられる。強力なライバルが存在する故に、機能競争に拍車がかかり、これ迄は上級機にしか採用されなかった様な機能が2−3万円のコンデジに奢られる様になった点は、ユーザーとして歓迎したい。


スマホとの連携機能も、昨今のコンデジでは皆そうである様に、充実している。本機でも背面右上にスマホ連携専用ボタンが装備され、電源オフからでも長押しでいきなりスマホとの WiFi 接続が始まる。iPhone 5s 側で専用アプリの Canon CW (Camera Window) を立ち上げると、カメラ側画像のiPhone 5s への吸い上げを簡単に行う事が出来、また iPhone5s 側から SX 700HS のズームやシャッターをリモートコントロールする撮影も可能となる。新世代のコンデジは、スマホをライバルでなく、力を合わせると1+1が2以上となる、強力なバディに変えるのである。

欠点は少ないカメラだが、あえて挙げるなら、電池の持ち、だろうか。前機種よりかなり持つ様になったものの、一日しっかり動画を撮影しようとすると途中でヘタる。動画デジカメとして売るなら、もう少し大容量バッテリを入れても良い気がする。多少グリップを大きくして、少し重たくなっても、このカメラを買う層にはそれが歓迎される事だろう。

もうひとつ欲しい機能は可動背面液晶。これまた重量・コストアップにつながるので入れにくい機能かもしれないが、スマホとの差別化の為には是非とも欲しい。さらに内蔵 EVF が将来機種で導入されればかなり完璧になる。(その点では、この大きさで内蔵 EVF を導入した Lumix シリーズは先を行く。最新機種の TZ-60 は、EVF に GPS まで備えていて、気になるコンデジである。)高倍率ズーム化する程に、両手に加えて顔面、という3点支持は手ぶれ防止にも助けになるはずだ。

金属外装のボディの質感も高く、ボタン類も大きめで押し易くなっている。動画機能も充実の高倍率ズーム、メーカー毎に様々な特徴があるが、PowerShot SX 700HS は時代を先取りした機能満載の、デジクマ研として推薦出来る一台、である。勿論、研究所長も愛用中。







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