荷物は出来るだけ少なくしたいが、広角から望遠までの撮影チャンスに対応したい、ということで、今回の登山コンパニオンに選択したカメラは、先日導入したばかりの Sony CyberShot RX10 MarkIV。24-600mm で明るいズームは、交換レンズ要らずで、本格撮影をしたいライトな登山には持って来い、だ。
いくつか登山道・コースがあるが、その見所や難易度説明なども見ながら、自然観察が出来そうで山道感をしっかり味わえそうな沢沿いの道、6号路を選択。高尾山口駅からケーブルカーの麓駅に向かい、左手の道をまっすぐに進んで現れる分岐を更に左手に進むと、琵琶滝を経由する6号路登山道だ。アスファルトの道が終了し、しばらくは石と木の根が多い、前日の雨でまだ濡れた土の路面を進む事になる。
途中、色々な場所で野鳥の鳴き声が聞こえるのだが、高い木が多いこともあって、なかなかその姿が見えない。一度だけ、シジュウカラが餌をついばんでいる所を発見し、600mm ズームでその姿を捉える事が出来た。野鳥撮影が目的で登ると、撮れ高としては期待通りにいかないのかもしれない。あるいは、野鳥が集まり易い場所がどこかにあるのだろうか。撮影を終えて、また黙々と頂上を目指す。途中途中に14箇所の見所&お休み場所があり、ベンチがある場所もあるので、初めて登っても迷う事は無いだろう。
しばらく眼下に眺めていた小川は、やがてちょろちょろと流れる沢水になり、均等に石が置いてある沢沿いの登山道になる。雨が降った後は滑らない様に注意も必要だが、石のお陰で殆ど濡れずに進む事が出来る。沢沿いの道が終わると、6号路の最後の胸突き八丁が現れる。そう、頂上へ向かう木と土で固めた階段の道だ。
別のルートから登山して薬王院の石段も登るのが大変だが、6号路の階段は手すりもなく、段差も大きいのでこれが運動不足の脚には応える。しばらく登っては休み、を繰り返しつつ、少しずつ頂上へ近づいて行く。低山とはいえ、頂上に近くにつれて気温が下がって行く高尾山だが、沢登りの後の階段は身体中の細胞を活性化させ、代謝を上げてくれるのか、汗が吹き出す。今回はマフラー型のタオルを持ってきていたので、汗を拭き拭き、最後の階段を登って行く。長い長い階段が終わると、平坦になり、やがてコンクリの道と合流して、すぐに頂上の広場に到着する。鮮やかな紅葉と、関東平野のパノラマが眼下に広がる、素晴らしい眺めである。
600mm の超望遠域まで使える CyberShot RX10 MarkIV を持参した効果は、頂上でも発揮された。パノラマの点にしか見えなかった遠くのビル群が、拡大してみると横浜のランドマークタワーだった、という事が判明したのである。手前の多摩ニュータウンから横浜、東京湾とその対岸まで。少しもやがかってはいるがはっきりと見渡す事が出来た。デジタル一眼レフでは 600mm 相当まで使えるレンズを携行するとかなりの重量になるが、ネオ一眼と呼ばれる一体型だからこそ、頂上までそれほどの苦もなく運ぶ事が出来た。身軽に登山するには iPhoneX だけでも良いかな、と出発前は迷ったが、このカメラを携行した甲斐があったと言うものだ。
そして晴れた日の高尾山登山の展望台は、もうひとつプレゼントを用意してくれていた。横浜が見える場所と反対側に行くと、夕陽が沈み行く富士山が綺麗に見えたのだ。これもまた、600mm 超望遠で日が沈むのを待って、富士山の稜線がオレンジ色に染まる様子を撮影する。普段は東京都心部のビル間に見える富士山を撮影していたが、600m の展望台からの邪魔するものが無い富士山は、うっとりする美しさ、であった。筋肉痛になりかけていたことも忘れて、夢中でシャッターを切る。
しかし、日が沈むと、急速に冷気が高尾山を覆い始める。さて、帰路を急がねば。薬王院を過ぎたあたりで相当暗くなって来たので、久しぶりにケーブルカーに乗ってみる事にした。片道切符を480円で購入、待ち列に並ぶ事20分ほどで乗車することが出来た。日本で最大の急勾配を走るという高尾山ケーブルカーは、最終が11月の平日は 17:45 なので、乗り遅れない様に注意が必要だ。鮨詰めの車両は、走り出すとその勾配から前後に強い荷重が。何かに掴まっていないと前後に振られる事必至なので、注意が必要。
午後5時半過ぎに清滝駅(調べるとケーブルカー麓駅の標高は 201m。そうか、この登山の標高差は、実はわずか 400m ほどしか無いのだ!!)に到着すると、駅周辺の店も閉まりつつあるのだが、商店が並ぶ通りの最後に、明治時代から100年続く老舗、高尾まんじゅうの有喜堂本店にまだ灯が。
こちらのおまんじゅうは白と茶色のシンプルな構成だが、柔らかく餡も甘過ぎず、さすが老舗の味わい。6個で6百円。高尾山登山のお土産には、是非買って頂きたい逸品である。
昼過ぎから思い立って実行、午後1時半から開始した登山ではあったが、4時間後には麓に戻っていた事になる。そして高尾山口から高尾経由で自宅最寄り駅に到着したのは、まんじゅうを購入してから1時間後。小学生の頃に遠足で行ってからしばらく間が開いてしまったが、定期的に登りたくなる魅力が大人になってわかる、そういう高尾山半日写真散歩登山、だった。
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