

高校生の頃、1981年に登場した New F-1 は電子化も進み、プロ用らしい堅牢性を備えた極めてタフなカメラだった。しかしカメラ本体だけで 149,000 円。高校生には文字どおりの高嶺の花で、フジヤのショーウインドウ越しに羨望の眼差しを送る日々だった。
圧倒的にクールで、プロのみがその利用を許される、手が届かない至高の存在。中高生時代に脳内で固められたそのイメージは、デジカメ全盛となった21世紀になっても自分を支配し続けた。
中古の F-1 良品を見かける度に、手に入れようかと考え込むが、「このカメラはお前が使うにはまだ早い。更に修行を積むべし。」そんな心の声がいつも聞こえて来てためらってしまうのだった。

勇気を振り絞ってまずは新品同様と珍しい保存状態のアイレベル・ファインダーを見せてもらう。神カメラ F-1 とともに。なんというファインダーの明るさであろう。更に専用ワインダーを3つの丸い回転キャップを外して底部に装着。

フジヤカメラ・スタッフの皆様がその音を聞いて集まり、中古カメラ店らしいプロ知識を全開にして、やや複雑な F-1 のボタン操作を手取り足取り伝授してくれる。この英知の中ではマニュアルは不要だ。

新品時価格の 1/6 ほどで程度の良い中古を手に入れ、店を出る。「夢を有難う」そんな言葉が恥ずかしげもなく、笑みとともに自然にこぼれ出た。30数年、通い続けたフジヤのショウウインドウ越しにあった夢がまた一つ、紙袋に収まった。
夢はいつか叶う。そしてアナログカメラの夢に終わりは無い。
[2016.3.13 追記] 映画「エヴェレスト 神々の山嶺」の主人公、岡田准一が演じたカメラマンの深町が手にしていたのも、Canon F-1 でした。
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