友人の実家がある浪江町は、2011年のフクイチ原発事故で福島で被災し、すぐには戻れない場所になってしまっていたのだが、マスターにその話をすると奥から出して来てくれたのが、日本酒「磐城壽 山廃純米大吟醸」。友人が一瞬驚きで言葉を失った。
磐城壽を製造していた酒蔵は浜通りあった為、津波の被害を受け、もう2度と飲めない日本酒になってしまった、と彼は思い込んでいたのである。マスターによるとその酒蔵が、場所を山形に移して復活を果たしたという。磐城壽の酵母が、津波を免れた日本酒の試験場の試験管に僅かに残っていて、そこからの再生だった、とマスター。
早速調べてみると、その酒蔵「鈴木酒造店」は、確かに山形で復活を果たしていた。こちらの HP で、現在の様子を知る事が出来る。
「東日本大震災を経験し、故郷と暮らしを失った私たちとってこれは、復興、そして文化継承に向けた命題です。「磐城壽」と「一生幸福」という二つの祝い酒ブランドが、「真の祝い酒」と「歓び分かち合いの酒」となるよう、人が集い、想いを伝える場づくりは勿論のこと、長井と浪江の二つの故郷の次代への繋ぎ役として全うすることが、私たちが造る「酒」という力水に寄せる想いです。」鈴木酒造店の店主鈴木氏の、復興への志の強さを感じるメッセージ。
思いがけず、友人が失った故郷で愛した日本酒に再会し、今夜は二人で、祝いの酒「磐城壽」を浴びるほどに呑む。
柔らかいカブの煮物、カラスミのサラダ、新鮮な刺身、あん肝、筍の唐揚げと、日本酒がよく合うメニューの数々。仕上げは、土鍋で作った熱々の鯛飯で、めでタイ新年会を打ち上げる。
2016年の始まりに、新たな希望が灯る様な、素晴らしい日本酒に出会った。滅多に泣かない友人の目に、光るものを見たのは気のせいだろうか。
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