いつかは来るだろう、と想像していたカメラの近未来が、予想よりも少し早く到来してしまった。その突然の登場は、カメラ好きにとっては、Google に買収された DeepMind 社の人工知能囲碁プログラム AlphaGo が囲碁名人に勝ってしまった時に近い衝撃、と言っても過言では無いのかもしれない。LEICA の伝統的な人気アナログ・レンズ、SUMMARIT (ズマリット)の LEICA らしいボケ味を、ソフトウェア的に実現してしまった。いつか LEICA の著名レンズ(SUMMARIT、SUMMILUX、ELMAR、SUMMICRON、NOCTILUX.....)の光学的特徴を、デジタルでリアルタイムに模倣するソフトウェアが開発され、「LEICA レンズがソフトウェア化する」未来が訪れる様な気がしていたが、それを LEICA 自身が先へ進めてしまったのだ。
HUAWEI P9 は、中国の HUAWEI 社とドイツの LEICA 社共同技術開発の、LEICA SUMMARIT 27mm f2.2 レンズが搭載され、カメラ機能が洗練された 5.2 インチ Android スマホである。
発表時に Dual Lens を備えた本端末を初めてメディアで目にした時には、てっきり 3D 撮影機能でもあるのだろうか、と思い込んでいたが、違った。二つのレンズは、正確な測距目的と、RGB のカラー CMOS センターが取り込む色の情報と、白黒専用 CMOS センサーが取り込む光と影の情報を分離するところに目的があったのだ。この二眼の仕組みにより、焦点が合った部分の正確な把握が出来る様になり、それを利用して合焦されていない部分を人工的にぼかして、デジタル一眼レフの様な写真の仕上がりを可能としたのである。
カメラ以外にも、背面からの液晶操作機能まで備えた指紋センサーや指関節のタップ やジェスチャーを利用した操作機能など、各種先進機能を備えた最新スマホであるが、デジクマ・ガジェットレビュー的にはあくまで、カメラ機能に 限って見ていく事にしたい。
P9 という超薄型カメラ(あえてスマホとは呼ばない)は、購入時から LEICA との共同開発をアピールする。固めの 紙で成型された純白の箱の表面には、赤い LEICA ロゴと金色の製品ロゴが踊る。中に入っているのは本体と、USB Type-C の充電器とケーブル、そしてプラスチック製のクリアケース。まだあまりケースの種類が多く無い P9 なので、ケース付きで提供されるというのは有難い。起動すると、まずはカメラ性能のチェック。マニュアルを読まずとも、複雑な機能を直感的に操作できるユーザーインターフェースには、カメラとスマホの専門2社のハイブリッド技術開発による工夫が感じられる。重要なのは、カメラとしての操作がカメラ中上級者でも満足出来る様に、充実している点。
液晶画面を上下左右にスライドすると、必要な機能が全て出てくる。その中でも重要なのが、画面を下から上にスライドすることで現れる Pro メニュー。測光モード、ISO、シャッタースピード、露出補正、AF 切り替え、ホワイトバランスを細かく設定出来る。そして、その操作もリアルタイムでサクサクなのである。スマホでここまで細かくカメラ設定出来る機種は Panasonic Lumix CM1や Nikon など一部のデジカメハイブリッドモデルにしか無かったのだが、ついに LEICA がそれを実現した。そしてその実現の仕方にかなりの本気が感じられて、驚いたのである。
HDR、白黒撮影、パノラマなどの撮影モードは、左から右へスワイプするとメニューが現れる。そしてさらに細かく、フィルムシミュレーションや解像度、RAW設定、水準器設定などを行う時には、右から左へスワイプすると設定メニューになる。
そして、本機で一番特徴的な擬似絞り設定機能「ワイドアパーチャ」は、Pro メニューではなく、通常の撮影画面上部左から二番目、に絞りマークのアイコンとして置かれている。頻繁に利用される機能ということで常時表示されているのだろう。実際、本日の作例写真撮影で最も多用したのは、この機能であった。
以下の作例では、最初の写真は f16 相当で全体にピントが合い、次の写真では f0.95 相当としてデジタル的にピントが合う範囲が狭い、撮影対象をくっきりと浮き上がらせる写真となっている。このカメラの実力は、これらの写真の対比から知る事が出来る。
尚、以下の写真以外にも多数、白黒写真を含め作例写真は flickr album に撮り溜めたので、こちらを参照頂きたい。デジタル化するレンズの実力を理解頂けるはずだ。
<f16 相当>

<f0.95 相当>

<f16 相当>

<f0.95 相当>

<f16 相当>

<f0.95 相当>

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