まずは本体+キーボード重量の考察。同じ様な厚みになる MacBook Air 13インチは重量 1.35kg。iPad Pro (12.9インチ) は Smart Keyboard (336g) を装着して、Cellular モデル (723g) での総重量は 1.06kg と、約 0.3kg の重量差。MacBook 12インチなら、画面は若干サイズが下がるが重量は 0.92kg となるので、iPad Pro + Smart Keyboard より軽くなる。薄くて軽い Apple デバイスを探している場合、以上の機種に MacBook Air 11インチ(重量 1.08kg)も候補に含めて、携行総重量重視で選ぶ方は、悩みが深まっているかもしれない。
しかし、MacBook vs iPad Pro の比較では、重さより、その使い方で機種選択を考えた方がベター。すでに MacBook を利用しているユーザーなら、iPad Pro は二者択一の選択肢ではなく、用途に応じたプラス1端末、と考えるべきだ。人によっては Pro 登場で iPad は MacBook に近づいた、と見るのかもしれないが、当方が使ってみたところでは、やはり DNA の違いが際立つ。どちらが良い・悪いというのではなく、得意分野が違うのである。
MacBook の方が、パッと開いてキーボード入力をする迄の時間が早いし、トラックパッドでマウスを動かせるので、画面上を触る必要も無い。「一人で集中して入力作業する」「高速タイピングを伴う作業」「ブラウザのタブをかなりの数、同時に開いて使いたい」「会議中、対面の相手から作業画面を覗かれたくない」「利用する場所が主としてデスクやテーブルがある屋内」という向きには MacBook が最強・快適であり続ける。タイピングを伴う作業をしようとしてさっと手が伸びる先は、比較的キー間隔が大きくなって打ちやすくなった Smart Keyboard を入手できても、やはり MacBook だ。当方は画面が大きな 15 インチと、薄くて軽い 12インチを両方、活用している。
一方、「デジタルの書類・書籍・地図・写真・動画を集中して読む・見る」「手書きを伴う作業が多い」「少数の会議で対面の相手にも画面を見せたい」「移動中も iPhone より大きい画面で Web 画面を見たい」という用途では iPad Pro に軍配が上がる。日経新聞電子版の紙面の見易さは、iPad Pro を一度使ってしまうともう iPhone や iPad mini には戻れない。
次に音の評価。スピーカーは4つになった。縦・横位置で、位相が変わるのは良く出来ているが、音質は期待ほどでは無い。iPad にしては優秀、だが、やはり板型端末の限界なのか、平板な音。この部分は期待しすぎてはいけない。出張中に BT スピーカーを持っていくと嵩張るので、という割り切りで使う便利さ、と理解しておけばがっかりしない。
iPad Pro ならではのオプション品 Apple Pencil の使い勝手は、多くのレビュワーの評判通り素晴らしい。ペン先の太さ・細さを角度で調整できて、アナログなタッチを反映させ易い。何故か iPad Pro 発売開始当初はこの Pencil が大変品薄で、当方は閉店間際の量販店に最後の在庫があると SNS 経由で教えてもらい、やっと入手出来た。当方は絵のセンスが殆ど無いので、手書き入力は会議中にメモをする用途で主に使う。
標準装備のメモアプリも iOS 9 になって手書きに対応、便利になった。会議メモをキーボードでタイピングすると、カナ漢字変換が必要でどうしても目線が画面に落ちてしまう。しかし、iPad Pro + Apple Pencil なら、紙のメモ同様の走り書きができるので、目線を落とす必要は無い。端末をホールドし続けるとしかし重いので、カバーケースなどで iPad Pro を斜めに傾ける方が便利に使えそうだ。Apple Pencil は次の iPhone7 では iPhone 液晶にも対応するらしいので、それは楽しみに待ちたい。
さて、そしてデジタルカメラ・ヘビーユーザーとして見逃せないのが、Photo Viewer としての使い勝手。iPad Pro は Lightning - SD カードカメラリーダーで SD カード内の写真ファイルを読み込ませると、シュシュシュッと大容量のカメラ画像を iPad Pro に高速転送してくれる。細かいピントや、解像度の良し悪しも、これまで iPhone 転送による検証だけでは気づかなかった微細な点まで発見出来る。128GB 容量の iPad Pro であれば、写真即時検証・閲覧用デジタル貯蔵庫として、活躍してくれることは間違い無い。iPad Pro 内蔵のカメラも、f2.4、8M 裏面照射 CMOS と十分なスペックで更に実用的になった。
iPad Pro の利点でもう一つ重要なのは、ネット対応の気軽さ。MacBook は WiFi がある環境では申し分無いのだが、それが無い場所となると WiFi ルーターに接続する、あるいは iPhone などでネット接続を共有する、等、外の助けが必要になる。薄型 MacBook には Ethernet 端子も無いので、有線のネット接続をするにも USB 端子を介して、ということになる。この外部デバイスを介したネット接続動作が、室内外で移動が多く隙間時間に都度端末を立ち上げる場合には、大変面倒なのだ。
iPad Pro Cellular バージョンを Apple Store で買うと、データ用 SIM を手に入れれば(当方は現在使わない場合の基本料が安い FREETEL/docomo の nano SIM を使っているが、海外利用が多いので Apple SIM への乗り換え or 併用も検討中)いつでもどこでも 4G LTE ネット接続が可能になる。画面サイズが大きくなった分、作業効率は上がっているので、面倒な接続動作が必要無い分、どこでも繋がって大きな画面でネット対応作業出来る端末としては iPad Pro は秀逸だ。
そして、昨日届いた Smart Keyboard。MacBook を普段使っていると、まず躓くのは英語・日本語切り替え。Command + Space での切り替えに慣れ親しんでいるオールド・マックからのユーザーは、この押し方を iPad Pro + Smart Keyboard でしてしまうと、
「検索」画面に移ってしまうので要注意。言語切り替えは、Control + Space か、地球ボタンで行う必要がある。これには慣れが必要だ。普通の Bluetooth キーボードにある、音量や画面の明るさ、音楽の再生をダイレクトにコントロールするキーが無いのは不便でもあるが、不用意なボタン操作で、移動中や会議中に音楽再生してしまうリスク(苦笑)は減ることになる。
以上の点から、当方は今のところ iPad Pro を、日経新聞や電子雑誌を読み、手書きの会議メモを Apple Pencil で取り、プレゼンをお客様にお見せし、また Netflix の動画を視聴、といった用途でまず使い始めている。手書き以外は MacBook でも出来ない事は無いが、iPad Pro の方が快適に使える用途に、iPad Pro を導入し始めている。
Smart Keyboard は、まだ使い始めて数日なので判断し難いところもあるが、既に所有していた、より軽い Apple Magic Keyboard や Logicool の薄い BT キーボード Keys-To-Go (重量はわずか 180g)で代用しても良かったかな、と思うほど、今のところタイピング利用は少ない。これだけ少ないと、いざ必要な時は内蔵ソフトキーボードだけでも良いのかもしれない。大きくなった分、ソフトキーボードでのタイプミスも少なくなった。iPad Pro 一本使いで、MacBook を持たず、これで全部済ませたい、というユーザーは Logicool の iPad Pro 専用ケース Create という選択肢もある。しかもこちらはバックライトありで、ちょっとしたパームレストもある。しかし、重量は 725g あるので、本体込み総重量は MacBook Air 13インチを超えてしまう。据え置きで使うなら便利かもしれない。
現在の悩みは、iPad Pro はそれでもやはり、電車通勤で常時携行するには少し重いので、主としてオフィス用 or 自宅用どちらかをベースとした据え置き利用としたいのだが、仕事・プライベートそれぞれに便利な用途があり、この10日間は半々で使ってみたが、主たる設置場所をまだ、決めきれていない。結局、iPad Pro を入れやすい薄型リュックを手に入れて、ほぼ毎日携行している次第。さすがに2台は買えないし、はてさて、どうしたものやら。嬉しくも、悩ましい。